タイトル:夜の帰り道



 今日もがんばったな。
 仕事帰り、いつもの通いなれた道を歩いている。そろそろ夏も終わり、夜は涼しくなってきた。
 ふと、おかしいことに気づく。
 誰かにつけられている、足音が2つあるのだ。
 「誰だ!」
 意を決して後ろを振り返り叫んでみたが、誰かいる様子もない。
 ここは一本道なので、もしつけられているとすれば振り返れば見つけられそうなものなのだが。
 ぼそっとつぶやく。
 「疲れてるのかな」
 あと5分も歩けば家に着く。家に入ってしまえば大丈夫だろう。
 だが、だんだんと足音は明確に聞こえるようになっていく。
 やばい、なんなんだろうか。
 足は次第に速くなっていき、家も見えて来たところで……。
 後ろに誰かいる気配がする。
 走って家まで行き、ドアに鍵をかける。
 「はぁ…はぁ…」
 ここまで来れば一安心だろうと思ったのつかの間だった。
 ドンドン!
 ドアを叩く音……この向こう側に誰かがいるのだ。
 ドンドン!
 警察に電話すべきだろうか。
 いや、その前にどんなやつか確認してみないといけない。
 覗き窓から見てみる。
 「か、母さん!?」
 俺は心底驚いてしまった。
 さっきつけていたのも母さんだったのだろうか。
 ドアを開ける。
 誰もいない。
 外に出て辺りを見回すが、やはり誰もいない。
 そこで俺はふとあることを思い出した。
 明日は母さんの命日じゃないか。
 墓くらい参ってくれていう母さんのメッセージだったのだろう。
 明日休みを取って母さんに会いに行こう。






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